【コラム】 八代亜紀の「舟唄」と「雨の慕情」が流れた昭和の大晦日 #八代亜紀 #紅白歌合戦 #レコード大賞



八代亜紀の「舟唄」と「雨の慕情」が流れた昭和の大晦日

佐藤利明(娯楽映画研究家・オトナの歌謡曲プロデューサー)


2024年12月4日(水)、日本の音楽史上、最高のシンガーである八代亜紀が、NHKに残した貴重な歌唱シーンを集成したDVDと「舟唄」「雨の慕情」などビッグヒットを収録したCDを同梱した「八代亜紀 プレミア歌唱集」がリリースされた。



■ブックレットには貴重な写真が収められている



1973(昭和48)年から1981(昭和56)年にかけての八代亜紀の歌唱シーンを集めたDVDには、初登場となった「第24回NHK紅白歌合戦」での「なみだ恋」から、「第29回NHK紅白歌合戦」での「故郷へ‥‥‥」にかけての大晦日の歌唱を堪能できる。


また、紅白での歌唱をきっかけにビッグヒットとなった「舟唄」は、大ヒット中の1981年の歌唱映像がふんだんに味わえるし、小学生までが「雨々ふれふれ もっとふれ」の手ぶりを真似するほどのブームとなった「雨の慕情」は、リアルタイムの「NHK歌謡ホール」(1981年)などの映像も存分に味わえる。


改めて八代亜紀のパフォーマンスを映像と音で堪能すると、彼女の従来のイメージである「演歌の女王」の枠を遥かに超えて、例えばジュリー・ロンドンやビリー・ホリデイのような「至高のレディ・シンガー」であることを実感する。これほど豊かな表現力だったのかと。





さて、名実ともに八代亜紀の代表曲というと、やはり「舟唄」(1979年)と「雨の慕情」(1980年)だろう。


1979(昭和54)年、今から45年前の大晦日の夜。日本全国のお茶の間のテレビから、八代亜紀の「舟唄」が流れていた。


もともとは1970年代前半、阿久悠がスポーツニッポンに連載していた「阿久悠の実践的作詞講座」で「美空ひばりが歌うこと」をイメージして作詞していた歌詞に、阿久悠とは堺正章の「街の灯り」(1973年)でコンビを組んだ浜圭介が作曲。八代亜紀が歌うことになったという経緯がある。


この年、5月25日にリリースされた「舟唄」は、年末に向けてじわじわとヒット。「第21回日本レコード大賞」では金賞だったが、「第30回NHK紅白歌合戦」では、八代亜紀が紅組の大トリで「舟唄」を歌唱。これがきっかけでレコードの売れ行きが急速に伸び、翌年、再び阿久悠と浜圭介コンビによる「雨の慕情」で、八代亜紀は「第22回日本レコード大賞」、「第11回日本歌謡大賞」を受賞。「第31回NHK紅白歌合戦」でも「雨の慕情」で大トリを務めた。



■1980年に行われたテイチクヒットパーティにて石原裕次郎さんと鏡割りを行った



つまり、1979年と1980年の大晦日は、八代亜紀の歌声で締めくくられたのだ。この時の大晦日の紅白歌合戦の「熱気」は、リアルタイム世代だけでなく、現在でも映像作品で追体験することができる。


現在上映中の集大成ともいうべき映画『海の沈黙』(若松節朗監督)の作・倉本聰作品である、高倉健主演『駅 STATION』(1981年・東宝・降旗康男監督)では、1979年の大晦日北海道増毛の居酒屋で、女将の倍賞千恵子と高倉健が、テレビで八代亜紀の「舟唄」をしみじみ観ているシーンが、男と女の物語のクライマックスとして描かれている。


その翌年の大晦日の紅白歌合戦と「雨の慕情」にまつわるエピソードは、フジテレビのドラマ「北の国から」第8話「水道」(1981年11月27日)に登場する。舞台は北海道富良野、1980年の大晦日、八代亜紀が「雨の慕情」を歌う紅白がどうしても観たいと純(吉岡秀隆)と蛍(中嶋朋子)が、友達の正吉(中澤佳仁)の家を訪ねるが、あてが外れてしまう。という展開だった。


いずれも劇中に、八代亜紀の「舟唄」「雨の慕情」にまつわるエピソードが効果的に登場している。遅れてきた世代にも、映画やドラマを通じて、昭和の大晦日の空気が体感できる。


 来年、2025年は、昭和100年にあたる。リアルタイム世代だけでなく、遅れてきた世代にも「至高のレディ・シンガー」八代亜紀の魅力を、この、昭和99年の年末に改めて味わうことができるのは何よりも幸せなことである。




<商品情報>

「八代亜紀 プレミア歌唱集」

発売日:2024年12月4日

品番:TEBS-11127

価格¥11,000(税抜価格¥10,000)

DVD2枚+CD1枚


■Disc-1

1、「第24回NHK紅白歌合戦」(1973/12/31*なみだ恋)

2、「第25回NHK紅白歌合戦」(1974/12/31*愛ひとすじ)

3、「第26回NHK紅白歌合戦」(1975/12/31*ともしび)

4、「第27回NHK紅白歌合戦」(1976/12/31*もう一度逢いたい)

5、「第29回NHK紅白歌合戦」(1978/12/31*故郷へ……)

6、「第2回日本民謡の祭典」(1976/10/23*山鹿灯籠踊り)

7、「昭和53年度作詩大賞」(1978/11/30*哀歌(エレジー))

8、「昭和54年度日本作詩大賞」(1979/11/15*舟唄)

9、「昭和55年度 古賀政男記念音楽大賞」(1980/7/29*港町絶唱) 

10、「特集 歌のビッグステージ」(1980/9/23*港町絶唱) 

11、「NHK歌謡ホール」(1981/4/7*雪の渡り鳥)

12、「五木 八代 演歌 夢の競演」(1981/4/18*なみだ恋)

13、「五木 八代 演歌 夢の競演」(1981/4/18*愛ひとすじ)

14、「五木 八代 演歌 夢の競演」(1981/4/18*おんな港町)

15、「五木 八代 演歌 夢の競演」(1981/4/18*舟唄)

16、「五木 八代 演歌 夢の競演」(1981/4/18*雨の慕情)

17、「五木 八代 演歌 夢の競演」(1981/4/18*港町絶唱) 

18、「五木 八代 演歌 夢の競演」(1981/4/18*雨のブルース)

19、「五木 八代 演歌 夢の競演」(1981/4/18*人生の並木路)

20、「NHK歌謡ホール」(1981/4/21*舟唄)

21、「NHK歌謡ホール」(1981/4/28*あなたに逢いたい)

22、「NHK歌謡ホール」(1981/4/28*アカシアの雨がやむとき)

23、「NHK歌謡ホール」(1981/6/2*白い花の咲く頃)

24、「NHK歌謡ホール」(1981/6/2*愛の終着駅)

25、「NHK歌謡ホール」(1981/6/9*おひまなら来てね)

26、「NHK歌謡ホール」(1981/6/9*すみだ川)

27、「昭和56年度 古賀政男記念音楽大賞」(1981/7/25*女心は港の灯)

28、「NHK歌謡ホール」(1981/8/4*精霊流し)

29、「NHK歌謡ホール」(1981/8/4*女心は港の灯)

30、「特集 NHK歌謡ホール」(1981/8/25*他人船)

31、「NHK歌謡ホール」(1981/10/13*舟唄)

32、「NHK歌謡ホール」(1981/10/13*雨の慕情)

33、「第25回レコード祭歌謡大会」(1981/11/3*うしろ影)


■Disc-2

1、「ビッグショー」(1976/10/17*愛ひとすじ)

2、「ビッグショー」(1976/10/17*おんなの夢)

3、「ビッグショー」(1976/10/17*貴方につくします)

4、「ビッグショー」(1976/10/17*ともしび)

5、「ビッグショー」(1976/10/17*なみだ恋)

6、「ビッグショー」(1976/10/17*八木節)

7、「ビッグショー」(1976/10/17*大利根月夜)

8、「ビッグショー」(1976/10/17*思い出行きの夜汽車)

9、「ビッグショー」(1976/10/17*さよなら故郷)

10、「ビッグショー」(1976/10/17*花水仙)

11、「ビッグショー」(1976/10/17*情炎)

12、「ビッグショー」(1976/10/17*もう一度逢いたい)

13、「ビッグショー」(1978/11/28*おんな港町)

14、「ビッグショー」(1978/11/28*おんなの夢)

15、「ビッグショー」(1978/11/28*貴方につくします)

16、「ビッグショー」(1978/11/28*なみだ恋)

17、「ビッグショー」(1978/11/28*愛の終着駅)

18、「ビッグショー」(1978/11/28*愛は死んでも)

19、「ビッグショー」(1978/11/28*女ごころ)

20、「ビッグショー」(1978/11/28*愛ひとすじ)

21、「ビッグショー」(1978/11/28*哀歌(エレジー))

22、「ビッグショー」(1978/11/28*もう一度逢いたい)

23、「ビッグショー」(1978/11/28*故郷へ……)


■CD

1、舟唄

2、雨の慕情

3、なみだ恋

4、愛の終着駅

5、愛ひとすじ

6、愛の執念

7、おんなの夢

8、貴方につくします

9、おんな港町

10、ともしび

11、しのび恋

12、もう一度逢いたい



■テイチクエンタテインメント

https://www.teichiku.co.jp/catalog/teichiku/2024/TEBS-11127.html

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