【コラム】裕次郎映画のミューズたち #石原裕次郎 #佐藤利明

7月17日は石原裕次郎さんの御命日「あじさい忌」です。

昭和の時代を象徴する不世出の大スター石原裕次郎が出演した映画を彩った、『ミューズ』たちをご紹介します。


裕次郎映画のミューズたち


佐藤利明(娯楽映画研究家・オトナの歌謡曲プロデューサー)


北原三枝「狂った果実」(1956年) ©日活




昭和の太陽、不世出の映画スター・石原裕次郎が出演した日活映画は、カメオ出演も含めて89作品。作品の数だけ、さまざまなヒロインがスクリーンを彩った。アクション映画、文芸作品、青春映画、サラリーマン映画など、そのジャンルも幅広い。まさに昭和の娯楽映画の象徴であり、20世紀のエンタテインメントだった。ここでは、裕次郎映画で輝いたアクトレス、ミューズたちをご紹介しよう。



北原三枝「俺は待ってるぜ」(1957年) ©日活




北原三枝

1956(昭和31)年4月14日。日活撮影所第四ステージで、石原裕次郎は北原三枝と初めて逢った。裕次郎が初主演作『狂った果実』(1956年・中平康)に出演するにあたり、出した条件が、日活のトップスター・北原三枝を「相手役にすること」だった。

その時のことを北原三枝=石原まき子夫人は「真っ白な背広を着た男の人が、太陽に向かってどんどん歩いていく。プラチナを粉にして、空から天使がキラキラを蒔いているような、太陽の光が燦々と、真っ白いスーツを着た裕さんの後ろ姿に注いでいるわけです。」(筆者のインタビュー)と回想している。

人妻と無軌道な若者のひと夏の愛を描いた『狂った果実』はセンセーショナルな話題となり、裕次郎は一躍、時代のスターとなった。以後、北原三枝と裕次郎は『勝利者』(1957年・井上梅次)、『俺は待ってるぜ』(同・蔵原惟繕)など25作品で共演。日活黄金時代の礎となった。




芦川いづみ「青年の樹」(1960年) ©日活




芦川いづみ

また、裕次郎映画のヒロインとして忘れられないのは、芦川いづみ。石坂洋次郎原作の文芸作品『乳母車』(1956年・田坂具隆)で初共演。芦川は初対面の印象を「アロハシャツを着て、挨拶に来て下さったんですね。日焼けをしていて、とても歯が真っ白で、大きくて、笑顔がすごく印象に残って、「あ、すごい」と思いました」(筆者のインタビュー)と語った。芦川いづみと裕次郎は『陽のあたる坂道』(1958年・田坂具隆)、『あじさいの歌』(1960年・滝沢英輔)、『あいつと私』(1961年・中平康)など青春文芸作品やサラリーマン映画など幅広い作品で共演した。




浅丘ルリ子「銀座の恋の物語」(1962年) ©日活




浅丘ルリ子

1960年代半ば、30代を迎えた裕次郎の『赤いハンカチ』(1964年・舛田利雄)、『夜霧よ今夜も有難う』(1967年・江崎実生)などムードアクションでヒロインを務めた浅丘ルリ子。1956年、浅丘が16歳の時の初対面の印象は「とにかくかっこいい。それまでの二枚目俳優さんとは全然違う、というより俳優さんらしくないの」(筆者のインタビュー)と語った。

浅丘が裕次郎の相手役を本格的に務めた『鷲と鷹』(1957年・井上梅次)で、裕次郎が「海の男は行く(鷲と鷹)」を歌い、浅丘にキスをする。この時、彼女は17歳だった。




裕次郎映画のミューズたち

宝塚出身のベテラン・月丘夢路は、成熟した大人の女性として『月蝕』(1956年・井上梅次)や『鷲と鷹』で、若い裕次郎を惑わした。ヴァンプ役が多かった中原早苗も『赤い波止場』(1958年・舛田利雄)や『紅の翼』(同・中平康)で、勝ち気でパワフルな女性を演じた。また、和田浩治映画のヒロイン・清水まゆみも『男なら夢をみろ』(1959年・牛原陽一)では、大人びたダンサーを演じている。赤木圭一郎の相手役が多かった笹森礼子は、サラリーマン映画『天下を取る』(1960年・同)ではバーのホステス役で登場。各社の映画でヒロインを演じていた水谷良重(のちの水谷八重子)はサラリーマン映画『青年の椅子』(1962年・西河克己)に出演、日活ヒロインとはまた違う味わいとなった。そして十朱幸代は、裕次郎映画のヒロインとして『殺人者を消せ』(1964年・舛田利雄)や『黒い海峡』(同・江崎実生)など五本の裕次郎映画でヒロインを務めた。


日活青春映画のヒロイン・吉永小百合は『あいつと私』で芦川いづみの妹役を演じ、『若い人』(1962年・西河克己)、オールスター映画『嵐の勇者たち』(1969年・舛田利雄)で裕次郎と共演した。


他社のトップ女優も裕次郎と共演している。松竹の桑野みゆきは『夜霧の慕情』(1966年・松尾昭典)、東宝の浜美枝は『昭和のいのち』(1968年・舛田利雄)と『嵐の勇者たち』、また東宝の星由里子も「若大将シリーズ」卒業後に『忘れるものか』(1968年・松尾昭典)で裕次郎の相手役を務めた。大映の若尾文子は、大映と日活の共同配給機構・ダイニチ映配時代に『スパルタ教育 くたばれ親父』(1970年・舛田利雄)で裕次郎の妻役を演じている。


裕次郎映画のミューズたちは、日活映画、いや日本の娯楽映画の黄金時代の美しき象徴でもある。

今年の夏、8月7日から大阪・京阪百貨店守口店にて開催される「石原裕次郎 音楽と映画展」では、『石原裕次郎作品のミューズ』と題した、裕次郎と共演した数多くの女優たちのパネル展示をはじめ、裕次郎が残した音楽と映画の世界が堪能できる展示会が開催されます。




■京阪百貨店開業40周年×昭和100年記念特別企画

「昭和の大スター 石原裕次郎 音楽と映画展」

歌手、そして役者として活躍した、昭和の時代を代表する大スター石原裕次郎の音楽と映画を堪能できる展示会。「嵐を呼ぶ男」のドラムセットをはじめ、貴重な資料の展示だけでなく映画上映会や、佐藤利明氏によるトークイベントも開催。

・場所:京阪百貨店・守口店 7階ギャラリー(入場無料)

・会期:2025年8月7日(木)~8月19日(火)

・時間:AM10:00~PM19:00 *最終日8/19は16:00まで

・映画鑑賞は別途入場券(500円)が必要となります


<佐藤利明トークイベント>

・日時:8月9日(土)14:00~ 8月10日(日)14:00~

・場所:京阪百貨店・守口店 7階ギャラリー(入場無料)

・主催:京阪百貨店

・企画:テイチクエンタテインメント

・協力:石原音楽出版社 日活

https://www.keihan-dept.co.jp/moriguchi/



■500曲を超える石原裕次郎の楽曲が聞き放題!

石原裕次郎・公式ファンサイト

「裕次郎倶楽部」

https://yujiro.club



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主演の映画とともに大ヒットした主題歌をはじめ昭和の名曲や洋楽スタンダード曲など、歌手としても類まれな才能を発揮した裕次郎の貴重な音源の数々を収録。

・CD5枚組 全90曲収録 11,000(税込)



■テイチクエンタテインメント

https://www.teichiku.co.jp/teichiku/artist/yujiro/

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