【ニュース・特集】活動休止から29年。令和の今もちあきなおみが愛されるわけ


1937年生まれの美空ひばり、47年生まれのちあきなおみ、59年生まれの山口百恵――。世代もデビューした時期も異なる3人だが、いくつかの共通点がある。ステージから姿を消して数十年という長い時間が経過していること。それにもかかわらず、その存在感は薄れるどころか、寧ろ増していること。現役時代は女優としても活躍し、様々なタイプの楽曲を歌いこなす表現力を備えていたことなどである。


89年に他界した美空ひばりは生涯で約160本の映画に出演。歌謡曲、演歌のみならず、ジャズやポップスでも圧倒的な歌唱力を発揮した。92年に活動を休止したちあきなおみは80年代以降、ドラマや映画、舞台にも多数出演。類まれなコメディエンヌぶりでCMやバラエティでも人気を集める一方、ジャズやファド、シャンソンのアルバムを制作するなど、ジャンルを超えた音楽活動を展開した。80年に21歳の若さで芸能界を引退した山口百恵は13本の映画に主演し、テレビドラマでも『赤いシリーズ』で高視聴率を連発。歌手としては7年半の活動期間に、バラードでもロックでもヒットを放ち、アイドルから国民的歌手へと飛躍した。



この1年は、奇しくもその3人がメディアを賑わせることが多かった。美空ひばりは今年6月に33回忌を迎え、テレビ各局はBSを中心に特番を編成。ちあきなおみはBSで2時間特番が3回もオンエアされた。引退40年を迎えた山口百恵は昨年、全曲のサブスク配信を解禁。今年1月にNHKで放送された引退コンサートの模様が大反響を呼んだことは記憶に新しい。


昨年10月にはTBS系『本当のこと教えてランキング』の「プロの声楽家が選ぶ、本当に歌がうまい女性歌手ベスト30」で、この3人の名前が同時にランキングされた。MISIA、吉田美和、島津亜矢、石川さゆりなど、第一線で活躍するアーティストが多数を占めるなか、現在活動していない歌手ではこの3人がトップ3。その事実からも、いかに傑出した存在であるかが分かるというものだ。


なかでもちあきなおみの人気ぶりはすさまじい。周年などの節目とは関係なく、映像媒体でも活字媒体でも周期的に特集が組まれ、そのたびに大きな反響を巻き起こしている。



たとえばテレビ。驚くことに2015年以降、毎年必ず「ちあき特番」が放送されている(再放送を含む)。最近ではBSテレ東『ちあきなおみ再び始まる歌姫伝説 デビュー50周年 新たな魅力再発見』が2019年以降3回、BS-TBS『魂の歌!ちあきなおみ 秘蔵映像と不滅の輝き』も昨年から今年にかけてすでに2回放送され、SNSではその都度、歌声を絶賛する投稿が相次いだ。


地上波でも『3秒聴けば誰でもわかる名曲ベスト100』(テレビ東京系)をはじめ、昭和歌謡を扱う長時間特番で、代表曲「喝采」を歌う姿が放送されると、その直後にCDのセールスが伸びるという現象が起きている。それは往時を知る世代だけでなく、テレビでちあきの存在を初めて知った若い世代をも魅了している証し。実際、通販サイトや動画サイトのユーザーレビューでは「出会えてよかった」「できれば生の歌声を体感したかった」など、平成生まれと思しき層からの書き込みも散見される。近年は桑田佳祐、宮本浩次、氷川きよし、田村芽実など、世代もフィールドも異なる実力派がちあきの歌をこぞってカバーしているので、そこから本家に興味を持つケースもあるようだ。


そのちあきは幼少期から米軍基地のステージでジャズを歌い、69年に「雨に濡れた慕情」でデビュー。独特の色気をしのばせたハスキーボイスで「四つのお願い」などのヒットを重ね、72年に「喝采」で日本レコード大賞を受賞する。その後も、心の内を繊細に表現する緩急自在の歌声と、ジャンルに捉われない活動で不動の地位を確立するが、92年に活動を休止。以来、一度も表舞台に姿を見せることなく現在に至っている。



だが、ちあきを求める声は鳴り止まない。この29年間、アルバムの復刻盤やベスト盤、全集BOXが何度となくリリースされたが、それらはいずれも好セールスを記録。2019年に発売されたコンセプトアルバム『微吟(びぎん)』は「喝采」「紅とんぼ」「矢切の渡し」などの代表曲に加え、名唱の呼び声高い「朝日のあたる家(朝日楼)」「ねぇあんた」「夜へ急ぐ人」も網羅したことで、現在までに35,000枚を超えるヒットになっている。


さらに今年の3月にはBOXセット『The Anthology of NAOMI CHIAKI ちあきなおみ大全集』がアンコールの声に応えて、20年ぶりに復刻。5枚のCDにオリジナル曲はもちろん、演歌やムード歌謡、昭和の名曲のカバー、叙情歌・ふるさと歌謡など、全80曲を収録した同BOXは、ちあきのすべてが詰まっていると言っても過言ではない内容で、やはり好評を博している。


昨今の音楽シーンはリズムやサウンドを重視したダンス&ボーカルユニットと、等身大の世界を歌うバンドやシンガーソングライターが主流。その中にあって、独自の感性でドラマチックな世界を表現するちあきなおみは唯一無二のソロボーカルとして、これからも新しいファンを獲得し続けていくに違いない。


(濱口英樹)






■あわせて読みたい


<商品情報>

●ちあきなおみ コンセプトアルバム「微吟」(読み:びぎん)
好評発売中
TECE-3529
価格 2800円+税


<収録曲>

1、 星影の小径 *ビクター音源
2、 イマージュ
3、 冬隣
4、 雨に濡れた慕情 *コロムビア音源
5、 四つのお願い *コロムビア音源

6、 紅とんぼ

7、 矢切の渡し
8、 すり切れたレコード/LE DISQUE USE *ビクター音源

9、 朝日のあたる家(朝日楼)/House of the Rising Sun *ライブ音源

10、ねえあんた

11、夜へ急ぐ人

12、祭りの花を買いに行く

13、かもめの街

14、嘘は罪

15、黄昏のビギン
16、喝采 *コロムビア音源

17、紅い花
18、そ・れ・じゃ・ネ



●「The Anthology of NAOMI CHIAKI ちあきなおみ大全集」
CD5枚組全80曲収録

TECS-12241 ¥13,200(税抜価格 ¥12,000)
*1000セット限定にて幻のBOXセット20年振りの限定復刻。


<Disc-1> ~ちあきわーるど~

1、黄昏のビギン
2、かもめの街
3、喝采
4、雨に濡れた慕情
5、 星影の小径

6、 悲しみを拾って

7、 百花繚乱

8、 伝わりますか

9、 役者

10、男駅・女駅

11、秘恋

12、冬隣
13、イマージュ

14、紅い花

15、色は匂へど

16、TOKYO挽歌



<Disc-2> ~昭和の名曲~

1、逢いたかったぜ
2、男の純情
3、かえり船
4、涙の酒
5、雨降る街角

6、玄海ブルース
7、赤いハンカチ
8、上海帰りのリル

9、未練の波止場
10、渡り鳥いつかえる

11、カスバの女
12、未練ごころ
13、星の流れに

14、連絡船の唄

15、岸壁の母

16、ネオン川



<Disc-3> ~魅惑のムード歌謡~

1、夜霧よ今夜も有難う
2、泣かせるぜ
3、粋な別れ
4、口笛が聞こえる港町
5、錆びたナイフ
6、こぼれ花
7、ふたりの世界

8、狂った果実
9、夜霧のブルース
10、ダンスパーティーの夜

11、黒い花びら

12、赤と黒のブルース

13、ふたりの夜明け
14、東京砂漠

15、お前にゃ俺がついている
16、放されて



<Disc-4> ~抒情・ふるさと歌謡~

1、港が見える丘
2、ルイ
3、星屑の街
4、リンゴの村から
5、白い花の咲く頃
6、おんな船頭唄
7、スタコイ東京
8、宵待草
9、雨のブルース
10、水色のワルツ
11、遠くへ行きたい
12、雨に咲く花
13、雪
14、恋文
15、啼くな小鳩よ
16、帰れないんだよ



<Disc-5> ~船村演歌を唄う~

1、矢切の渡し
2、歳月河
3、紅とんぼ
4、男の友情
5、情け歌
6、しのび雪
7、ひとりしずか
8、都の雨に
9、さだめ川
10、君知らず
11、汐鳴り
12、昭和えれじい
13、片情
14、帰郷
15、母のいない故郷
16、冬の華





■テイチクエンタテインメント

http://www.teichiku.co.jp/teichiku/artist/chiaki/


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