2年ぶりとなる第103回全国高野球選手権大会が甲子園で開幕し、高校球児による熱戦が繰り広げられているが、昨年行われた甲子園交流試合との違いは、ブラスバンドによる応援がアルプススタンドに帰ってきたことだろう。
このブラスバンドによる応援で近年人気曲となっているのが『ダイナミック琉球』という曲で、まさに勇壮なメロディと躍動感あふれるリズムは、選手だけでなく高校野球ファンの間でもイントロが流れただけで高揚する一曲となっている。
この『ダイナミック琉球』という曲は、2008年に元E-ZEE BAND(イージーバンド)のフロントマンとして活躍したイクマあきらが作曲し自らが歌った曲で、これまでに多くのアーティストがカバーしているが、現在この曲に特別な思いをもって歌っているのが、元ザ・コブラツイスターズの川畑アキラだ。
川畑はザ・コブラツイスターズ解散後、ソロアーティストとして故郷の鹿児島県最南端の島である与論島を拠点に音楽活動を行っているが、昨年からのコロナの影響を受け、観光業を主としている島の風景が一変。川畑自身も、これまで年間100本以上のライブを行っていたが、ほとんど行えない状況となった。
それでも「うたや音楽は必要なもの」と前を向き、この『ダイナミック琉球』が高校球児だけでなく、日本中を鼓舞するような応援歌にしたいと願う川畑アキラに話を聞いた。
●川畑さんがこの『ダイナミック琉球』という曲に出会ったのはいつ頃ですか?
2008年にザ・コブラツイスターズを解散して、東京から沖縄に音楽活動の拠点を移しました。その時にこの『ダイナミック琉球』の作曲者であるイクマあきらさんに、シングルCD「忘れたんじゃない思い出さなくなるだけさ」をプロデュースしていただきました。それが縁となってイクマあきらさんのライブに三線とコーラスでサポートをするようになりこの曲を知りました。
●この曲を歌うこととなったきっかけは?
当時、沖縄に住んでいたのですが、新しいエイサーの曲として幅広い年齢層に愛されている曲だと認識していました。自分自身も小学生の頃から高校まで野球をやっていたこともあり、やはり甲子園での応援歌として歌われていることを知り、強くカバーしてみたいと思うようになりました。
●ご自身も故郷の与論島で学生時代に野球をされていたということですが、何か島ならではのエピソードはありますか?
父が地元の与論島でリトルリーグの監督をやっていました。生まれたときは右利きでしたが物心つく前から(野球で有利とされる)左投げ左打ちに育てられました(笑)。リトルリーグに所属していた当時、与論島は観光ブームで景気も良く、父兄の皆様をはじめとても応援していただきました。甲子園に高校野球を観戦しに行ったり、姫路・高槻・岸和田・泉佐野リトルの相手チームの家にホームステイしたり、沖縄の米軍基地のチームと対戦してホームステイさせてもらうなど、沢山の経験をさせていただきました。小さな島でしたが、とても恵まれていたと思います。逆に同年代のアメリカの少年が与論島にきて家に泊まった時、母の味噌汁は飲まずにジュースばかり飲んでいたのは印象的でした(笑)。
■リトルリーグ・与論ジャガーズ在籍時(小学校5年生)
●現在川畑さんは、故郷の与論島に戻られて音楽活動を続けていますが、コロナ禍で自身の音楽活動だけでなく、与論島の観光産業にも大きな影響が出ていると思います。昨年から島の変化は感じていますか?
去年の3月にヨロンマラソンが中止になってから島のイベントはほぼ中止で、自分自身も年間100本以上ライブを行っていましたが、去年は配信も合わせて5本のみでした。ゴールデンウィークから夏の終わりにかけての書き入れ時も飲食店は休業し、ゴーストタウンのような街は生まれて初めての経験でした。気持ち的にも落ち込み塞ぎこんでいましたが、今年に入り感染対策もしっかり行い、島外からの観光客の方に検温やPCR検査を呼びかけるなど、『withコロナ』で島の観光業や飲食店も再開しました。まだまだ楽観視はしておりませんが、明るい兆しも少しずつ見えてきていると思います。
■与論島の美しいビーチ
●まだまだ困難な状況かもしれませんが、何か島の方と話していることはありますか?
音楽の演奏やライブができる自分のお店に、インターネットの回線を導入して配信ライブを始め、SNSなどでも積極的に発信しています。与論島の音楽仲間や、演劇、映像に携わる方やドローンでの撮影など、エンタテインメントが好きなメンバーを中心にYouTubeなどで楽曲制作もしています。これまで様々な困難な状況でも「うたに助けられた島」でもあるので、島の心が沈まないように頑張ろうと話しています。
■与論島全景
■川畑アキラがマスターを務める与論島 dining&music「うちじゃしょり」
●今回新たに『ダイナミック琉球』のミュージックビデオが製作されましたが、どのような思いで製作されたのですか?
スタッフとの話し合いの中で、やはりこの『ダイナミック琉球』は沖縄で撮影すべきでは?という意見があり私自身も賛同しました。2008年のザ・コブラツイスターズ解散後、9年ほど那覇で生活をしていましたが、大好きな沖縄と、困難な状況でも頑張っている方々を応援したいという気持ちで製作しました。
自分が歌っているシーンは、沖縄県うるま宮城島のカフーバンタという断崖絶壁の場所で、自分のMVとしては初のドローン撮影も行いました。そして、頑張る沖縄の人々にスポットを当て、それぞれが“頑張っている場所”で撮影しました。
●川畑さんは、この『ダイナミック琉球』をどのような曲だと思っていますか?
琉球弧の自然を思わせる、壮大で躍動感のある曲だと思います。自分の生まれ育った与論島はかつて統一される前の古琉球、北山の王が治めていた場所でもあり、その世界観にもすんなり入れました。歴史の中で勝利したものだけでなく負けたものたちへの優しい視線が感じられ「それでもダイナミックに生きて行こう!」というメッセージが込められた応援歌だと思っています。
●先日閉幕したオリンピックでも「音楽」がクローズアップされることがありました。ご自身も学生時代は野球に打ち込み、“シンガーソングランナー”として趣味のマラソンでも多くの大会に出ていますが「スポーツと音楽」の関係について、川畑さんなりに思うことはありますか?
スポーツも音楽も普段の練習が大切ということと、本番では心・技・体において最大限の力を発揮するということでは同じだと思います。苦しい時や辛い時も諦めずにやり続けることなど、メンタル面もとても大事ですね。終わった後の達成感や、応援を自分の力に変えるところなど、共通する部分は沢山あると思います。音楽もスポーツも心と体に作用する命薬(ヌチグスイ)だと思います。
アスリートの皆さんは大変な状況の中、延期を経てオリンピックを迎えました。様々な意見がありましたが、アスリートの皆さんやオリンピック、そして生まれた故郷を応援したいという想いから、奄美での聖火リレーのランナーとして参加しました。自分自身もスポーツだけでなく、これまでたくさんのエンタテインメントからも力をもらいました。アスリートの皆さんも、集中したいときや気持ちを高める時に、音楽やエンタテインメントから大なり小なりの力をもらっていると思います。そんなエンタテインメントの火を消してはいけないと思います。コロナにやられる前に、人々の心がやられてしまいます。そうならないためにも「うた」や「音楽」は必要なものだと思っています。
■2014年フランスにて行われた「ワインを飲みながら走る」メドックマラソンに日本の仮装で参加
●ザ・コブラツイスターズの頃から、熱くエネルギッシュな歌声で聞く人の背中を押し続けてきましたが、現在困難な状況でも頑張る方々へのメッセージをお願いします
自分も音楽を続けてきた中で様々な困難な状況を経験してきましたが、このコロナウイルスほど困難な状況は未だかつて経験がありません。世界中の人々が混ざり合い、密になった祭りのような日々をとても愛おしく懐かしく感じます。それでも一人一人の力は微々たるものですが、自分なりにできることは何かあるのではないかとも思います。
なんとか生きる希望を見出して、その先を見届けようではありませんか!そのために「自分の好きなこと、できることからやるんだよ!」と。だから川畑アキラは、うたいます!
ありがとうございました。
●川畑アキラが歌う「ダイナミック琉球」各音楽配信サイトにて配信中
<商品情報>
「ダイナミック琉球」川畑アキラ
TECI-682 / 定価:¥1,528(税抜価格 ¥1,389)
1.ダイナミック琉球
2.島の花
3.赤花
4.ダイナミック琉球(カラオケ)
5.島の花(カラオケ)
6.赤花(カラオケ)
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